弊社が独自に開発しました材料の一部を紹介します。
UV/EB硬化性材料の合成
(メタ)アクリルオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ部分(メタ)アクリレート、各種ポリマーへの(メタ)アクリル基付与等
光/熱併用硬化材料の合成(ラジカル及びカチオン硬化材料)
ラジカル重合基としては(メタ)アクリル基、イオン重合基(カチオン重合)としてはエポキシ基の両方の官能基を一分子中に有するエポキシ部分(メタ)アクリレートで、異種重合が可能である。
異種重合とは、重合方法の異なる官能基を段階的に重合させ、緻密な三次元硬化物を得る手法であり、得られた硬化物は相互貫入ポリマー(Inter Penetrating Network Polymer)を形成しているとみられ、従来の単独重合体よりも高剛性かつじん性を有することが特長である。(図2、3参照)
エポキシ/ノボラック樹脂をバックボーンとしたENA(Epoxy Novolac Partial Acrylate)、ENC(Epoxy Novolac Partial Acrylate with Carboxylic group)を異種重合の代表例としてあげる。ENAは、官能基としてエポキシ基/アクリル基/水酸基を有し、ENCはエポキシ基/アクリル基/水酸基/カルボキシル基をそれぞれ一分子中に含む異種重合化合物である。
表1 アクリル型異種重合化合物の末端官能基
1. ENA(ノボラック部分エポキシアクリレート)
エポキシノボラック樹脂は、クレゾール(またはフェノール)にエポキシ基を側鎖とし、メチレン基を介しての繰り返し構造単位を有し、耐熱性、耐化学薬品性に優れるため、電子材料等の分野に広く用いられている。このような特長を持つエポキシノボラック樹脂に、(メタ)アクリル酸をエポキシ当量より少ない任意の値で反応させ、一分子中にエポキシ基および(メタ)アクリル基を共存させたものがENAである。一般的にENAは経時的に増粘しゲル化を起こしやすく、不安定であったが通常のアクリルオリゴマーと同程度に安定性を有する。
ENA硬化物表面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した写真を図2に示す。また、対象物として通常のエポキシノボラック樹脂(エポキシ成分)とその完全アクリレート(アクリレート成分)との混合物を硬化したもののSEM写真を図3に示す。
図1 ENAの化学構造式
図2 ENA硬化物のSEM写真
図3 対象物(混合硬化物)のSEM写真
ENA化合物は均一分散であるが、対象物は不均一分散である。このことは、(メタ)アクリル基官能基成分はUV硬化時にエポキシ基成分を排除しないでネットワークを作り、次いで熱硬化によりエポキシ基成分がそのネットワークを貫入して相互貫入ポリマー(IPNポリマー)を形成していると考えられる。エポキシ基成分と(メタ)アクリル成分との単純混合体とIPNポリマーとの熱力学挙動も異なっており、IPNポリマーは耐熱性、剛性にすぐれている。
ENAの硬化方法には、UV硬化、次いで熱硬化が最適である。初期に、粗な(メタ)アクリル成分ネットワークを作り、凍結状態から加温によりエポキシ基の開環反応を行い、分子内および分子間での高分子化が進み、UV硬化によるネットワークに貫入し、異なったネットワーク間の相互貫入が形成される。応力緩和しながら硬化するので、硬化収縮が低い。
ENAは、多彩な分子設計ができることも特長の一つである。エポキシノボラック樹脂の分子量(繰り返し単位構造、すなわち官能基数)および、エポキシ基と(メタ)アクリル基のモル分率を適宜選択することで、ユーザーの要求性能に合致できる。
表2 エポキシモル分率が及ぼす硬化物の傾向
エポキシモル分率
1 < k < 0
要 因
UV硬化性
遅 速
(メタ)アクリル基の含有率
耐熱性
高 低
エポキシ基の含有率
収縮性
低 高
エポキシ基の開環は収縮率を減少
密着性
高 低
エポキシ基の開環による水酸基の生成
耐化学薬品性
高 低
エポキシ基のエーテル結合
エポキシ基と(メタ)アクリル基のモル分率は任意であるが、とりわけ0.5/0.5の当量光の場合に、UV硬化性と耐熱、収縮、密着性などのバランスの良好なものが得られる。
エポキシモル分率が及ぼす硬化物の傾向
を表2に示す。
ENAは極めて高粘性液体のため、エーテルエステル系溶剤、(メタ)アクリルモノマー等を用いて希釈する必要があるが、好適にはイソボロニルアクリレート(IBXA)が望ましい。希釈率は40%である。
最近の開発状況
1)
NEAT ENA
無溶剤・非希釈のENA。極めて高粘性である。モル分率は0.5である。
2)
エポキシモル分率=0.7〜0.8
エポキシ含有量を高くし、熱硬化が主体である。ノボラックの分子量を高く官能基数を増加させて、耐熱性を向上させた設計である。耐熱性分野。溶剤又は、希釈モノマー使用。
2. ビスフェノールAエポキシ及び多官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリル変性
2官能以上のエポキシ樹脂の部分(メタ)アクリレートの合成が可能。
エポキシ樹脂構造、モル分率はユーザーの指定による。
他社品には見られない高純度、低塩素タイプも開発済。
3. ENC
ENCはENAの2ーヒドロキシプロピル基を酸無水物でハーフエステル化を行うことによりカルボキシル基をペンダントさせたものである。
これは開環反応を行うエポキシ基とカルボキシル基を一分子中に含んでいるので、潜在性硬化触媒を用いることにより、一液型の異種重合が可能となり、必要に応じて未硬化部分をアルカリで除去(現像)できる特長を持つ。ENAと同様にUV硬化後に熱硬化を行うことが望ましい。
エポキシ基とアクリル基とのモル分率が物理的特性に与える効果は、ENAと同様であるが、ENCの場合は、さらにエポキシ基とカルボキシル基とのモル分率が関与するので、実際には硬化物物性からモル分率を考える必要がある。
ユーザーの用途および要求性能を考慮し、弊社の知見を生かした分子設計の必要性が高い。但し、カルボン酸残基を利用したアルカリ現像を考慮するならば、現像に必要な酸価(AV mmgr/KOHeq.)から逆算し、カルボン酸のモル分率を求めると共に、経験からk値を決定している。
図4 ENCの化学構造式
推奨するENC(k=0.40)の代表的な数値を示す。
外観
黄色液体
粘度
c.a 10,000 cps(25℃)
AV
70
樹脂成分
60%
溶剤
PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
アルカリエッチングレジスト用に開発されたENCは高い現像性を持ち、硬化物性のバランスが良く、幅広い用途に適応できる。且つ、反応性の高いエポキシ基とカルボキシル基を一分子中に持ちながら、比較的安定性は良好である。
IPNポリマーの代表例としてエポキシノボラック樹脂の部分アクリル化体ENAとそのカルボキシレート化体ENCについて述べた。両者共に“多様性”が特長であり、モル分率を変えることにより、耐熱性、硬化性(UV、熱)、収縮率、耐化学薬品性を適宜選択できることはユーザーには非常に魅力的だと思われる。レジストに限らず、先端分野への応用がなされている。
(メタ)アクリルポリマーの合成及び反応性ポリマー
プラスチックの保護塗装
架橋剤の合成
ブロック化イソシアネート、多官能ウレタンアクリレート
水性化材料の合成
アクリルポリマーの水性化
ゴム弾性付与材料の合成
プラスチックへのUV保護塗装分野
<掲載新聞内容抜粋>
プラスチックへのUV硬化表面保護塗装
武蔵塗料(株)とカガワケミカル(株)は、共同で“高硬度”、“耐摩耗性”に優れるプラスチックへのUV硬化型塗料を開発した。従来は保護塗料のベースとなるアクリルポリマーに構造的な限界があり、密着性に劣り保護塗料としては不十分であったが、ポリマーを根本的に改良した構造に変え、密着性の向上を図った。この改良されたアクリルポリマーの分子設計と合成は、カガワケミカル(株)が行い、塗料の最適化は武蔵塗料(株)が行なった。主な用途は携帯電話の外装であるが、ノートパソコン等の軽量化が必要とされる電子機器への展開も進める。
この製品開発に対し、2000年工業技術賞(大阪工研協会)が両者に贈られた。
(化学工業日報2000年掲載要約)
プラスチックへの水性UV樹脂表面保護塗装
武蔵塗料(株)とカガワケミカル(株)は共同でプラスチックへの水性UV硬化塗料を開発した。水性UV化により、大幅に環境負荷低減が達成可能となった。水性化の分子設計と合成はカガワケミカル(株)が担当した。
プラスチックへの水性塗料の塗布は水をはじき易く、均一塗膜塗装が困難であったが、ベースレジン、架橋剤及び添加剤に水分散基を導入し、且つ、エマルションの粒子径、粒度分布等の最適化を行なってこの問題を解決した。
開発した水性UV塗料は既存のUV塗料とほぼ同等の物性を示し、且つ硬化性も良好なので従来のUV塗装ラインでの使用が可能である。用途は主としてモバイル関連の保護塗装である。
この応用開発に対し、2005年工業技術賞(大阪工研協会)が両社に贈られた。
(化学工業日報2005年掲載要約)
特許 日本特許取得済み
接着分野
レンズ、異種材料への接着剤の合成
第一回大阪市ベンチャービジネス賞受賞
レジスト分野
耐熱、アルカリ可溶、多層積層板の接着
注型分野
凹型用UV硬化樹脂、携帯電話の押しボタン等
簡単に弊社が開発した材料を述べましたが、まだまだ一部でしかありません。ユーザー様のニーズを適確にとらえ、弊社の分子設計技術を加味させて高付加価値の製品作りをさせていただきます。
それも、びっくりする程の早さで・・・。
ご質問やご相談等ございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。
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